ある小児科勤務医の伝えたいこと。



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ある小児科医が伝えたいこと。

2011年2月16日以降更新されません。

インフルエンザに罹患した場合


新型インフルエンザは多くの人にとっては季節性インフルエンザと同様に自然に治る病気です。次に示す厚労省の発表したデータによると子供は感染しやすいものの亡くなりにくいことがわかります。




世界的にはハイリスク群(基礎疾患のある方、2歳未満の子供、妊婦、高齢者など)ではインフルエンザ治療薬による治療が推奨されていますが、ローリスク群(リスクの少ない大多数の方)ではインフルエンザ治療薬による治療は推奨されていません。これはデータ的に治療の意義が少ないためです。日本ではこれと異なってローリスク群であってもインフルエンザ治療薬が使われる割合が非常に高くなっています。これには専門家の間でも賛否両論があります。ただし、インフルエンザ治療薬では脳症は防げないことは以前からわかっています。また新型インフルエンザで多い呼吸障害も早期から出現するため治療薬では防げない可能性が高いと多くの専門家が考えています。またこのような重症例は極一部であるため過度の心配する必要はありません。これらの理由から症状出現直後、つまり超早期からの治療の必要性は少ないと思われます。

発熱や通常の風邪症状だけでは早期受診の必要性は高くないと言えます。11月20日現在の情報では日本で新型インフルエンザにかかった人が亡くなる割合は14万分の1で、単純には比較できないものの他の国々と比べても優秀な成績となっています。これはインフルエンザ治療薬の使用よりも重症患者さんに対して速やかに医療を施せる優れた医療体制があるためであると多くの医師が考えています。超早期治療よりも重症化の兆候のある方が速やかに治療を受けることができる体制を保つことが大切です。これには医療人だけでなく多くの方の協力が必要です。発熱や通常の風邪症状だけであれば救急外来ではなく、なるべく一般外来を受診するようにしましょう。ただし、呼吸がしんどそう、顔色が悪い、けいれんが起こる、意味不明の言動がどんどん悪化する(寝ぼけたような言動を取ることは高熱の時には起こりやすいので一時的であればあわてずに様子を見ましょう)、反応が鈍い、嘔吐を繰り返しているなどの症状がある場合はすぐに医療機関を受診してください。

またタミフルやリレンザといったインフルエンザ治療薬を特効薬と言う方もおられますが、これらの薬はウイルスが増えることを抑えるだけであり、ウイルス自体をやっつける力はありません。最終的にウイルスをやっつけるのは自分自身の免疫力です。そのためローリスク群の多くの方ではこれらの薬なしでも自然に治ります。これらの薬の効果はインフルエンザの症状を1日程度短くすることです。自然治癒のときには一度下がった熱が2日ほどして再び1日程度あがる二峰性発熱を認めることがありますが、インフルエンザ治療薬でこれが少なくなることも認められています。一方、インフルエンザ治療薬の使用により免疫が十分に付かない可能性があることも一部の医師が報告しています。

発熱のとき
水分をとり、熱がこもらないようにしましょう。この点に気をつければ体温が必要以上にあがることはなく、発熱自体で脳に影響が出ることはありません。発熱によりウイルスの増殖を抑え、自己の免疫力を高めることで体に有利な状況を体がわざと作り出そうと体温をコントロールしているのです。発熱は下げなければならない敵ではなく、病気を治すための味方なのです。発熱があってもひどくしんどがっていなければわざわざ下げる必要はありません。おしっこの量が極端に少なくなっている場合は水分が不足し、体温がコントロールできなくなります。このような場合には受診が必要になります。また発熱時によく使用されている冷却シートですが、解熱効果はほとんどありません。特に頭部に貼った場合では全く解熱効果はありません。多くの方が誤解されているため述べさせていただきました。詳しくはこちらで。

咳や鼻水
これらはウイルス自体や感染によって痛んだ細胞を体外に排泄するために存在します。これも体にとっては敵ではなく見方です。むやみに押さえ込まないほうが回復は早くなります。インフルエンザを始めとする風邪の場合には咳や鼻水を止める薬は多くの場合は不要です(状況によって出ることもありえますが)。咳が楽にできるよう痰を出しやすくする薬は効果的です。詳しくはこちらで。
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