ある小児科勤務医の伝えたいこと。



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ある小児科医が伝えたいこと。

2011年2月16日以降更新されません。

発熱について


1:高熱で後遺症など残しませんか?

発熱とは本来、病気を治そうという体の自然な反応です。病原体を弱らせ、免疫を高める効果があります。水分がそれなりに取れ、熱がこもるような状態でなければまず心配はいりませんので無理に熱を下げる必要はありません。ただしひどい脱水になると体が熱をコントロールできなくなるため、水分はこまめに取るよう心がけてください。ではなぜ高熱で後遺症を起こすと思われているのでしょうか。インフルエンザや風邪のときにごく稀に脳炎や脳症という合併症を起こし、脳が直接影響を受け、後遺症を残すことがあります。高熱を伴うことが多く、脳炎・脳症がわかっていなかった時代の人は熱で頭がおかしくなったと思ったのでしょう。脳炎・脳症は特に予防法はありませんが、非常にまれなため必要以上に心配することはありません。

2:熱のときは何に気をつけるのですか?

「体温が何度あるか」ということよりも「元気さはどうか」、「水分は取れているか」といった体全体の状態を把握するようにして頂くと不要な心配をしなくてすみます。解熱を考えるのは発熱のためにしんどすぎて水分を取ることができない、安眠もできないなど体力を消耗する可能性のある状態のときです。病気と闘うには体力も重要ですから、このような場合には一時的にでも解熱し、体力を温存することを考えましょう。また解熱剤の効果は熱がどれだけ下がったかではなく、どれだけ元気になったかで評価するようにして下さい。熱がそれほど下がっていなくても元気がでればそれほど心配はありません。一方、ずっとぐったりしたままの場合は熱でしんどいのではなく、病気自体でしんどくなっている可能性があり、早めに受診していただく方が良い状態です。また熱性けいれんを心配される方もおられますが、解熱剤にはそれを予防する効果は特にありませんので必要以上に心配しても仕方がありません。熱性けいれんを起こしやすい方は別の薬で予防します。

3:発熱のときはどうすれば良いのか?

頭部の冷却シートには体温を下げる効果は全くありません。業者が発熱に対する保護者の方の不安をあおっているように思われます。できることは水分をこまめに取ること、できるだけ安静にすることです。熱が急に上がるときは手足が冷たくなり、寒気を伴います。寒気が強いときは暖めてあげて下さい。熱が上がりきると手足は暖かくなりますから、熱がこもらないようにして下さい(厚着は避けましょう)。水分が足りているかはおしっこを見て下さい。おしっこがそれなりに出ていればひどい脱水はまずありません。

4:受診の目安

生後2か月以下の赤ちゃんの発熱(38℃以上)。水分がとれず、おしっこがでない。1日中ウトウトしている。無表情で元気がない。解熱剤を使ってもぐったりしたまま。けいれんした(特に初めての場合は早急に)。元気でも熱が長引く(5日以上)。

5:参考

 ヒトではできないためトカゲでの実験ですが、ここにあげたグラフは1975年にサイエンスという最も権威のある雑誌に載ったクルーガー医師の論文のものです。トカゲを34℃から42℃の環境で飼育(変温動物ですから室温と体温が同じになります)した上で、トカゲを死亡させる力をもった細菌を感染させた後の生存率(SURVIVAL)の日数経過(TIME)を見ています。体温が高い方が生存率も高くなっています。ただし42℃のとき3日目以降に死亡していますが、これは高体温が原因のようです。このことから水分がまったく取れていなかったり、厚着で熱がこもったりした場合は必要以上に体温が上がってしまいますから、逆に体に良くないこともわかります。

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