日本脳炎についてもう少し詳しく説明しています。->
<その他、接種可能な主な予防接種(受けたほうが良い予防接種)>
ここに紹介するワクチンは諸外国ではごく一般的なワクチンで多くの子供たちが接種しています。しかし、日本では残念なことに行政からの補助がないため有料で、接種率も高くありません。どれも受けていただきたいワクチンばかりですので、子供手当てを充てるなどして子供の健康を守りましょう。
■おたふくかぜ(ムンプス)■
ほほの腫れと痛みが特徴です。発熱を伴うこともあります。200〜3500人に1人くらいの割合で回復が難しい聴力低下や難聴を起こします、また髄膜炎、膵炎といった合併症も起こしやすく、入院が必要なこともあります。またおたふくかぜと紛らわしい病気が多いため正確に診断できないことがあります。そのため何度もおたふくかぜの疑いで園や学校を休む子供がおられます。予防接種の副反応で非常にまれですが、髄膜炎を起こすことがあります。しかし自然に感染するよりもはるかに確率は下がりますし、大半はワクチンと関係なく起こるもののようです。日本のおたふくかぜの流行状況を考えると非常にメリットが大きい予防接種のひとつです。WHO(世界保健機構)は予防接種体制のしっかりした国では積極的に行うべき予防接種と各国に通達していますが、残念ながら日本はそれに従っていません。
<図:ムンプスワクチンを定期接種している国々(オレンジ色)>
要チェック→大阪小児科医会のおたふくかぜワクチン啓蒙ポスター
■みずぼうそう■
体中に水疱ができます。症状を軽くする薬もありますが、みずぼうそうの後、数年から数十年して起こる可能性があるひどい痛みが特徴の帯状疱疹は薬では予防できません。免疫に問題のある方の場合は命に関わることがあります。これらの点で予防接種にメリットがあります。ときに予防接種をしてもみずぼうそうになることがありますが、軽くてすむことが多いです。WHOは先進国ではみずぼうそうの予防接種のメリットが大きいとしており、予防接種を勧めていますが、やはり日本では実現されていません。
■子宮頚癌ワクチン■
現在、日本人では1年に2500人程がこの癌のために亡くなっています。発癌性ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で起るため、このウイルスの感染をワクチンで予防することで癌の発症を抑えることが可能です。女性の8割がこのウイルスに一生のうちに1度は感染すると言われています。ヒトパピローマウイルスは感染しても多くの方は自然と治るのですが、十分な免疫がつかないため、繰り返し感染する可能性があります。そして感染された方の一部が癌化することがわかっています。20代、30代の女性の癌では一番多い癌でもあり、そのため子供のうちに予防することが効果的です。諸外国では小学校高学年もしくは中学生の女の子全てを対象にワクチン接種が行われている国が増えています。WHOは全ての女の子に接種することを勧めていますが、やはり日本では実現されていません。50歳くらいまでの女性にも効果があります。ただしワクチンを受けても完全に予防はできないため20歳以降は定期的に子宮頚癌検診を受けることは必要です(ワクチンと検診を合わせることが最も効果的とされています)。
■ヒブ(Hib)ワクチン■
ヒブとはインフルエンザ桿菌b型のことです。インフルエンザウイルスと紛らわしいのですが、全く別の細菌でインフルエンザ自体とも特に関係はありません。しかしこの菌は小児において細菌性髄膜炎を始めとした重症感染症の原因となることがあります。小児の細菌性髄膜炎の原因菌の約60%を占めており、年間発症者数は600人と推計されています。ヒブ髄膜炎の予後は悪く、5%が死亡し、23%が難聴、硬膜下水腫、てんかんなどの後遺症を残します。
<図:細菌性髄膜炎の原因菌>
治療薬は抗生剤で行いますが、最近は抗生剤の使いすぎの影響もあり、薬の効きが悪いヒブが増えてきています。感染しないことが重要となります。予防接種は大変有効であり、実際、多くの国ではこの予防接種をすべての子供に打つことでヒブ髄膜炎の発生を90〜100%の高確率で抑え込みました。日本は予防接種に関しては残念ながら後進国であり、WHOが全小児への接種を勧めているにも関わらず、2008年末までは接種できませんでした。小さい子ほどかかりやすいのでできるだけ早く打つことが大事です。
ヒブワクチンについては別の案内もあります->
■小児用肺炎球菌ワクチン■
肺炎球菌はヒブについで多い細菌性髄膜炎の原因菌で、死亡率や後遺症を残す確率はヒブよりも高くなっています(ヒブワクチンの項目の最初の図を参照してください)。この菌による髄膜炎は、年間200人くらい発生しています。肺炎(12,000人)や、重い中耳炎、菌血症や敗血症も起こします。ワクチンを打つことでこの菌が原因の感染症のリスクが7〜8割減少します。この菌も治療薬である抗生剤の効きが悪い耐性菌が多いので予防接種でかかりにくくしておくことが大切です。WHOが全小児への接種を勧めているにも関わらず、最近(2010年2月)まで接種もできませんでした。
<図:小児用肺炎球菌ワクチン導入状況(日本で導入される以前の状況)>
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<最後に>
海外ではこれらの予防接種は積極的に行われています。多くの国では無料です。またここにあげた以外の予防接種(B型肝炎など)も行われています。あまり知られていませんが、B型肝炎は濃厚な接触で感染します。家族内感染や保育園での集団感染の報告もあります。罹患すると肝癌のリスクになります。さらにこの他にも日本ではいまだに打つことができないワクチンもあります(ロタウイルスや副作用のより少ないポリオワクチン、成人の百日咳の予防のためのワクチン、自然に水痘(みずぼうそう)にかかった人が帯状疱疹を発症しないよう水痘ワクチンを用いた帯状疱疹ワクチンなど)。残念なことですが、日本は予防接種の後進国です。ここに取り上げたような情報も行政からは提供されません。この現状を変えるためにはできるだけ多くの方に今の状況を認識していただくことが大事だと考えます。
雑談:帯状疱疹ワクチンは水痘に自然罹患した人に打つワクチンです。小さいうちにかかっておこうともらいにいった時代もありましたが(未だにもらいに行く人もいますが)、わざわざもらいに行ってかかったのに、逆に年をとってから帯状疱疹ワクチンとして水痘ワクチンとほぼ同じものを打つことになるかもしれません。こっけいな話になってしまいます。自然罹患せず、小さいうちに水痘ワクチンを受けておきましょう。
<お勧め予防接種スケジュール>
すべての子供たちに世界標準レベルの予防接種を受けさせてあげたい。それが私の願いです。
(注:ここに取り上げた図の多くはワクチンメーカーの資料やインターネット上で入手できる資料を使用させていただいております。)
以下もご利用ください。