ある小児科勤務医の伝えたいこと。



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ある小児科医が伝えたいこと。

2011年2月16日以降更新されません。
季節性インフルエンザについて

1、インフルエンザについて

インフルエンザウイルスにより主に冬期に流行する感染症です。高熱に加え、咳や鼻水などの風邪症状、時には下痢・腹痛などの消化器症を伴います。発熱は2〜5日間程度続きます。心臓病、呼吸器疾患(ひどい気管支喘息など)、糖尿病、先天代謝異常症、免疫不全、腎臓病といった病気を持っている方や高齢者、妊娠28週以降の妊婦はハイリスク群と呼ばれており、特に注意が必要です。これらのハイリスク群の方ではタミフルなどの抗インフルエンザ薬の投与にメリットがあります。ハイリスク群以外の元来健康な方は薬を使わなくても重症化することは少なく、(とは言っても経過に注意は必要ですが、)水分をしっかりとり、安静にすることで自然に治ることが大半です。薬を使わない場合は使った場合と比べて発熱期間は1日程度長くなるとされています。治療の有無に関わらず、数日で解熱する方が大半ですが、中には発熱が長引く方もおられます。


2、当小児科での治療方針について(ハイリスク群以外の方の場合)

 タミフルやリレンザといった抗インフルエンザ薬はインフルエンザウイルスの増殖を抑えるという作用を持っています。あくまでもウイルスをやっつけるのは自分自身の免疫力です。このため抗インフルエンザ薬はウイルスが増える時期である発症後2日以内に使用しなければ効果は期待できません。

近年、問題となったタミフルによるとされる異常行動(関連性ははっきりしていません)、抗インフルエンザ薬の効かないウイルスが出現し増加していること、抗インフルエンザ薬での治療を行っても合併症である脳症の発症予防にはならないこと、もともと自然に治る病気であるということなどから、ハイリスク群でなければ抗インフルエンザ薬は必ずしも使用する必要はないと考えています。薬剤耐性インフルエンザが増えることでハイリスク群の方を中心に重症化する方が増えます。また発生が危惧されている強毒性の新型インフルエンザが薬の効かない型になる危険性が高まり、大変恐ろしいことを招く可能性があります。このような方針ですが、治療内容に関しては診察時の状況により最終判断したいと考えております。また異常行動についてはタミフルの内服とは関係なく起こることは知られており、タミフルを内服する・しないに関係なく、発熱が落ち着くまでは注意して看護していただくことが必要です。またインフルエンザでは気管支炎などが後から起こることもあり、咳がひどくなるときや発熱が長引くとき、ぐったり感が強くなるときなどには再診が必要となります。弱毒型新型インフルエンザについてはそのときの国内、海外の状況を考慮して判断することになります。

注意:タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬の治療を途中で止めると耐性ウイルスが出現しやすくなりますので、一旦始めれば副作用の心配がない限りはなるべく最後まで続けてください。

登校登園までの期間:解熱後2日間経つまでは登校・登園とも学校保健法により禁止されています。しかし抗インフルエンザ薬を使用した場合は解熱後も3日程度はウイルスが残り、完全に治りきっておらず、人にもうつしやすいことが知られています。本人の体調を整えるということと、感染予防の点から、法的な強制力はありませんが、抗インフルエンザ薬を使用した場合には解熱後3日は家でゆっくりされることをお勧めします。このため通常の経過であれば、完全に治りきるまでの期間は抗インフルエンザ薬の使用の有無ではそれほど変わりないように思われます。


3、タミフル以外の治療について

インフルエンザに効果のある薬にはタミフルのほかにもリレンザという吸入治療薬があります。5歳以上でお薬を吸い込むことのできるお子さんで使用可能です。効果や副作用、異常行動などについてはタミフルと特に変わるものではありませんので使用すべき方は基本的にはタミフルのときと同じです。また麻黄湯という漢方薬も効果があることがわかってきました。麻黄湯は昔からある漢方ですが、小児のインフルエンザの治療に使われるようになったのは最近であるため情報が少なく、副作用や実際の効果など十分わかっているとは言えません。情報がそろうまで当院小児科では使用を見合わせる方針です(当院では未採用です)。


4、インフルエンザ脳症について

インフルエンザ脳症はけいれんや意識障害といった神経症状で発症します。発熱2日目までに発症することが大半で、発症頻度は1万分の1程度と高くはありません。まぎらわしいものに高熱によってけいれんを起こす熱性けいれんがありますが、脳症の場合は意識障害が長引き、悪化していくのが特徴です。また脳症とは関係なく子供では高熱のため見えないものが見えたり、聞こえたり、うわごとを言ったりすることがあります。悪化傾向がなく短時間で治まれば熱せん妄という子供でよくある状態ですが、症状が長引く場合や悪化する場合は脳症の可能性もあり受診が必要です。また、けいれんが10分以上続いたり、けいれんの形に左右差があったり、けいれんの後に麻痺があったり、1日に2度以上けいれんを起こしたり、けいれん後の意識回復が長引く場合は速やかな受診が必要となります。

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